※展示品はポスターおよび一部資料のみとなります。ご了承ください。
近年、起立時にめまいや動悸などが起きる自律神経の病気である起立性調節障害の症状が長期化するケースが増加しています。この病気は中高生に多く見られることからも、症状の長期化は不登校などの深刻な状況を招く恐れがあります。また、起立性調節障害長期化の背景には、デコンディショニングという「長期間運動しないことによる筋力の低下」があるとされています。この状態に陥る背景に、ゲームやテレビ、SNSなどの屋内娯楽が指摘されています。例えば、起立性調節障害を発症し、「しんどいから家で休んでゲームでもしていよう」などとなってしまい、その結果デコンディショニングに陥ってしまうのです。 デコンディショニングの解消のためには運動が推奨されています。こうしたことからも、この病気の治療方法の一つとして運動療法は有効であると言わていますが、起立性調節障害を抱える子どもの多くはその症状からも立った姿勢での運動は難しく、運動に対するモチベーションがあまり高くないと言われています。
これらの研究や、前述のデコンディショニングに陥る背景を踏まえ、寝たままでできる運動を用いたシリアスゲームが起立性調節障害の長期化防止(デコンディショニングの解消)において効果的なのではないかと考えました。
寝たままの運動と連動する、2D横スクロールアクションゲームを制作しました。ステージやキャラクターのグラフィックは対象となる年齢・性別(中高生)を意識しました。また、酔ってしまうことを考慮し、ゲームは2Dとしました。ゲームはスマートフォンでプレイします。
図1 ゲーム画面
図2 システム図
図2のシステム図のように、右ひざの上にORPHE COREというセンサを装着し、足の動きを検出しました。検出する動きは、図3にあるような横になった状態で「足を胸に引き寄せる動き」と「足を漕ぐ動き」です。「足を胸に引き寄せる動き」でキャラクターがジャンプし、「足を漕ぐ動き」でキャラクターが前進します。
図3 検出する動作(左:足を胸に引き寄せる動き 右:足を漕ぐ動作)
図4 プレイ中の様子
制作したゲームの動画
制作したゲームが実際にモチベーション維持に効果があるのかについて調べるべく、実験を行いました。J-PANAS法を用い、ゲームを用いた場合の運動とゲーム用いない場合の運動で実験前後のポジティブ・ネガティブ度合いを計測し、それらを比較しました。どちらとも横になった姿勢で足を漕ぐ運動を行います。 実験の流れは下の図5の通りです。順序効果を排除するため、被験者をパターン1とパターン2に分けて実験を行いました。